ストーリー

物語は三浦の元を訪ねた、ある青年空手家の目を通して語られる

1980年代の奄美大島。ここに1人の青年がやってくる。
富田省吾(とみたしょうご)、空手の道を極めるため、島に住む伝説の空手家・三好一真(みよしかずま/三浦一広)に試合を申し込むためだった。だが、道場はさとうきび畑の真ん中に立つボロボロのプレハブ。今の三好には、かつて大観衆の前で試合をした面影はなく、富田の挑戦にも全く興味を示さなかった。


三好は道場に様々な問題を抱えた若者たちや子どもたちを受け入れ、空手を通して彼らが立ち直る支援をしていた。その日も、富田との面会もそこそこに、暴行を受け病院に運ばれた美月(みづき)のもとに駆けつける。母親の育児放棄にあい、まだ幼い弟の面倒を見ながら懸命に生きている高校生だった。


三好の日常は、富田が想像していた空手家の姿とはほど遠かった。昼間は消防士として働き、その他の時間は保護司として、子どもたちの対応に困った学校や児童相談所からの相談を受け、夜の街を見回り、時には子どもたちからのSOSの電話に駆けつける。24時間、昼夜を問わず奔走していた。


戸惑う富田をよそに、三好の元には次々と行き場を失った若者たちがやってきた。空虚な心を埋めるため、シンナーに手を出す若者。校内暴力をくりかえしたあげく少年院に収監され、実の親にさえ見捨てられた奄美一のワル。その中に、親の育児放棄にあっていた7歳の少女、伊都(いと)がいた。


ひょんなことから伊都に心を寄せられる富田。三好からは伊都との交流を促されるが、空手とは無縁のことだと反発する富田。だが、三好にはある狙いがあった。伊都の心を開くことが、空手の真髄に気付くきっかけになる。果たして、富田は三好の教えに応えることができるのか・・・